障害者雇用が進まない会社の共通点と解決策
―5つの原因を整理する
監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)
障害者雇用の支援サービス比較メディア「障害者雇用ベンダー比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省・JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の公表資料および支援サービス各社への取材知見をもとに作成しています。
「求人を出しても応募がない」「採用してもすぐに定着しない」「そもそも何から手をつければいいか分からない」――障害者雇用が進まない企業には、いくつかの共通したパターンがあります。原因を放置したまま採用活動だけを繰り返しても、状況は変わりません。この記事では、進まない会社によく見られる5つの共通点と、それぞれの解決の方向性を整理します。
📑 この記事でわかること
「雇用が進まない」とはどういう状態か
一口に「進まない」といっても、企業によって状況は様々です。「応募が集まらない」「面接まで進んでも採用に至らない」「採用できても短期間で離職してしまう」など、つまずくポイントは会社ごとに異なります。まずは自社がどの段階でつまずいているのかを整理することが、解決の出発点になります。
進まない会社によくある5つの共通点
① 受け入れ体制が整う前に採用を急いでいる
配慮事項や相談窓口、業務指示の出し方などを決めないまま採用活動を始めてしまい、入社後に現場が対応しきれず早期離職につながるケースです。
② 任せられる業務が切り出せていない
「何を任せればいいか分からない」まま採用を進め、結果として仕事が用意できず、本人のモチベーション低下や早期離職を招くパターンです。
③ 情報不足のまま人事担当者に一任している
制度・助成金・支援サービスの情報が社内に蓄積されておらず、担当者が手探りで進めることで、時間ばかりかかってしまう状態です。
④ 「人数を満たすこと」が目的になっている
法定雇用率の達成だけを目的にすると、本人の適性や配置を軽視した採用になりやすく、結果として定着しません。
⑤ 社内の理解が広がっていない
現場の管理職や同僚に、障害特性への理解や関わり方の情報が共有されておらず、受け入れ後の孤立や、そもそもの協力を得にくい状態です。
共通点ごとの解決の方向性
| 共通点 | 解決の方向性 |
|---|---|
| ① 受け入れ体制の準備不足 | 採用前に配慮事項・相談窓口・業務指示のルールを決めておく |
| ② 業務が切り出せていない | 現場の業務を棚卸しし、任せられる作業を具体的にリストアップする |
| ③ 情報不足のまま担当者任せ | 制度・助成金・支援サービスの情報を整理し、社内で共有する |
| ④ 数合わせ思考 | 「何人採るか」より「どんな業務にどんな人が合うか」から逆算する |
| ⑤ 社内理解の不足 | 研修や情報共有の機会を設け、現場を巻き込みながら進める |
共通して言えるのは、いずれも「採用活動そのもの」ではなく「採用の前段階の準備」に原因があるということです。求人を工夫する前に、まず社内側の準備を見直すことが、遠回りのようで最短の解決策になります。
何から始めればいいか|優先順位の付け方
すべてを同時に解決しようとすると負担が大きくなりすぎます。まずは次の順序で着手することをおすすめします。
- 1. 業務の棚卸し:現場にヒアリングし、切り出せる作業の候補を洗い出す
- 2. 受け入れ体制の骨子づくり:相談窓口・指示系統・配慮の基本方針を決める
- 3. 社内共有:関わる現場・管理職に、進め方と目的を説明する
- 4. 採用方法の検討:自社採用が難しければ、外部の支援サービスも比較検討する
自社だけで進めるのが難しいときの選択肢
業務の切り出しや受け入れノウハウが社内にない場合は、外部の支援サービスを活用する企業も増えています。農園型(自社外の農園で作業を行う)、テレワーク型、人材紹介型、業務切り出し支援型など、進め方にはいくつかの選択肢があり、業種や拠点、予算によって向き不向きが分かれます。
いずれの方法にも一長一短があるため、複数の支援サービスを比較したうえで、自社の状況に合う形を選ぶことが、遠回りを避ける近道です。
よくある質問(FAQ)
Q. 障害者雇用が進まない一番の原因は何ですか?
A. 企業によって異なりますが、「受け入れ体制が整う前に採用を進めようとすること」と「任せられる業務が切り出せていないこと」が多く見られます。採用前の準備が鍵になります。
Q. 社内に反対意見がある場合、どう進めればよいですか?
A. 反対の背景には情報不足による不安があることが多いです。具体的な業務内容や配慮事項、他社の運用例を共有し、段階的に小さく始める計画を示すことをおすすめします。
Q. 自社だけで進めるのが難しい場合、どうすればよいですか?
A. 業務の切り出しや採用ノウハウが社内にない場合は、外部の支援サービスを活用する選択肢があります。複数のサービスを比較したうえで、自社に合う形を選ぶことをおすすめします。
参考・出典
- 厚生労働省「障害者雇用対策」関連公表資料
- 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)公表資料
※本記事は一般的な傾向と対応の方向性を整理したものであり、個別企業の状況に応じた対応方法は異なります。具体的な進め方については、管轄のハローワークや専門の支援サービスへの相談をおすすめします。