障害者雇用の面接・採用の進め方
―聞いてはいけない質問と合理的配慮
🤖 3行でわかる面接・採用の進め方
- 本籍地・家族の職業や健康・宗教・思想信条など、応募者の適性や能力と関係のない事項を聞くことは、障害の有無にかかわらずすべての採用選考で避けるべき「就職差別につながるおそれがある事項」に該当する。
- 募集・採用時の合理的配慮は、障害者本人からの申出を受けて、事業主が話し合いのうえで具体的な措置を検討・実施する仕組み(障害者雇用促進法第36条の2〜第36条の5、合理的配慮指針)。
- 希望された配慮が事業主にとって過重な負担にあたる場合、一方的に断るのではなく、その旨を説明し、話し合いのもとで実施可能な代替措置を検討することが求められる。
監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)
障害者雇用の支援サービス比較メディア「障害者雇用ベンダー比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省の公表資料(合理的配慮指針・公正な採用選考の基本)をもとに作成し、内容を確認しています。
障害者雇用の採用選考を初めて担当する方から多く聞かれるのが、「面接で何を聞いてよいのか分からない」「配慮はどこまで必要なのか」という不安の声です。実は、聞いてはいけない質問のルールは障害の有無にかかわらず共通していますし、合理的配慮にも決まった手続きの型があります。この記事では、面接・採用選考の進め方を、厚生労働省の公表資料に基づいて整理します。
📑 この記事でわかること
採用選考の大原則:適性・能力で判断する
厚生労働省は「公正な採用選考」の基本として、採用選考は応募者の適性・能力のみを基準に行うことを掲げています。これは障害者雇用に限った話ではなく、すべての採用選考に共通する原則です。障害者雇用だからといって特別な基準があるわけではなく、「本人が持つ適性・能力で判断する」という土台の上に、必要な配慮を組み合わせていく、という考え方で臨むのが基本になります。
面接で聞いてはいけないことは?
厚生労働省は、応募用紙への記入や面接・作文で本人に尋ねることが「就職差別につながるおそれがある事項」として、次のような項目を挙げています。
| 分類 | 具体例 |
|---|---|
| 本人に責任のない事項 | 本籍地・出生地、家族の職業・続柄・健康・地位・収入・資産、住宅の状況、生活環境・家庭環境 |
| 本来自由であるべき事項(思想・信条に関わるもの) | 宗教、支持政党、人生観・生活信条、尊敬する人物、思想、労働組合や学生運動など社会運動の経験、購読している新聞・雑誌・愛読書 |
これらの事項は、本人の適性・能力とは関係がなく、採否の判断材料にすべきではないとされています。厚生労働省によれば、不適切な質問に関する相談では「家族に関する質問」が多くを占めており、面接の緊張をほぐそうとした雑談がきっかけになりやすいと指摘されています。悪意がなくても就職差別につながるおそれがある質問になり得るため、面接官への事前の周知が重要です。
合理的配慮とは何か
合理的配慮とは、障害者雇用促進法第36条の2から第36条の4の規定に基づき、事業主が、募集・採用や雇用の場面で障害者と障害者でない者との均等な機会・待遇を確保するために講じる措置のことです。同法第36条の5の規定により、この措置の適切かつ有効な実施を図るための「合理的配慮指針」が定められており、次の基本的な考え方が示されています。
- 合理的配慮は、障害者と事業主との相互理解の中で提供されるべきものである
- 複数の配慮の選択肢があるとき、事業主は障害者との話し合いのもとで、その意向を十分に尊重したうえで、より提供しやすい措置を選んでよい
- 事業主に過重な負担を及ぼす場合は、配慮の提供義務の限りではない
合理的配慮はどう進める?3つの手順
厚生労働省の合理的配慮指針は、募集・採用時の合理的配慮を次の3つの手順で進めるとしています。
手順1:障害者からの申出
合理的配慮が必要な応募者は、事業主に対して、募集・採用にあたって支障となっている事情と、改善のために希望する措置の内容を申し出ます。具体的な措置の内容を申し出るのが難しい場合は、支障となっている事情を伝えるだけでも構いません。措置の準備に時間がかかる場合もあるため、応募者には面接日等より前に時間的余裕をもって申し出ることが求められます。
手順2:措置の内容についての話し合い
事業主は申出を受け、支障となっている事情が確認できた場合、どのような措置を講じるかを応募者本人と話し合います。応募者が具体的な措置を申し出るのが難しい場合は、事業主側から実施可能な措置を提示して話し合います。
手順3:措置の確定
話し合いを踏まえ、事業主は応募者の意向を十分に尊重したうえで、講じる措置を確定します。希望された措置が過重な負担にあたると判断した場合は、実施できないことを応募者に伝え、求めがあれば理由を説明します。
面接での配慮の具体例
合理的配慮の内容は障害の特性や個々の事情によって異なりますが、面接時の配慮としては、例えば次のようなものが挙げられます。
- 肢体不自由がある場合:面接会場までの移動距離をできるだけ短くする、車椅子等で利用しやすい会場を選ぶ
- 聴覚・言語障害がある場合:筆談・手話通訳の用意、質問内容を文書でも提示する
- 視覚障害がある場合:試験問題や案内資料を点字・拡大文字・音声で用意する
- 精神障害・発達障害がある場合:面接時間を短く区切る、質問の意図を分かりやすく伝える、緊張を和らげるための休憩を挟む
これらはあくまで一般的な例であり、実際にどの配慮が必要かは、応募者本人との対話を通じて確認することが前提になります。「障害名だけで自動的に配慮内容を決める」のではなく、本人の申出をもとに個別に話し合う姿勢が重要です。
過重な負担にあたる場合はどうする?
事業主は、合理的配慮の提供にあたって何でも無制限に対応しなければならないわけではありません。企業の規模や体制から見て過重な負担にあたると判断される場合、その措置を実施できないことを応募者に説明できます。ただし、一方的に「できません」で終わらせるのではなく、次のような対応が指針で求められています。
- 求めがあれば、実施できない理由を応募者に説明する
- 過重な負担にならない範囲で、他に実施可能な代替措置がないかを話し合う
- 複数の選択肢がある場合、事業主が提供しやすい措置を選んでよいが、応募者の意向は十分に尊重する
こうしたプロセスを社内であらかじめ整理しておくと、実際に採用選考の場面で慌てずに対応しやすくなります。自社だけで進め方に不安がある場合は、採用選考のノウハウを持つ外部の支援サービスに相談する方法もあります。
よくある質問(FAQ)
Q. 障害者雇用の面接で、家族の職業や本籍地を聞いてもよいですか?
A. 避けるべきです。本人の適性・能力と関係のない事項として、厚生労働省が就職差別につながるおそれがある事項に挙げており、障害の有無にかかわらずすべての採用選考に共通するルールです。
Q. 合理的配慮は、応募者から申し出がなくても提供する必要がありますか?
A. 募集・採用時の合理的配慮は、原則として本人からの申出を受けて対応する仕組みです。申出が具体的でない場合は、事業主側から実施可能な措置を示して話し合います。なお、採用後の合理的配慮については、事業主が必要な注意を払っても労働者が障害者であることを把握できなかった場合、提供義務違反を問われません。
Q. 希望された配慮が過重な負担にあたる場合はどうすればよいですか?
A. 実施できないことを応募者に伝え、求めがあれば理由を説明します。一方的に断るのではなく、話し合いのもとで代替措置がないかを検討することが求められます。
参考・出典
※本記事は採用選考時の一般的な配慮事項と合理的配慮の手続きを分かりやすく解説するものです。個別の採用選考における具体的な対応は、応募者との話し合いや障害特性によって異なりますので、必要に応じて専門家や最新の公式情報をご確認ください。