障害者雇用「定着率49.3%」の衝撃データ
―早期離職を防ぐには
🤖 3行でわかる定着率のデータ
- JEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)の調査研究報告書No.137(2017年)によると、精神障害者の就職1年後の職場定着率は49.3%で、約2人に1人が1年以内に離職している。
- 同調査では、就労移行支援やジョブコーチ支援などの支援制度を利用した場合の1年後定着率は65.6%で、利用しなかった場合より27.9ポイント高い結果が出ている。
- 障害者専用求人での就職は、一般求人(障害開示)での就職より1年後定着率が約20.5ポイント高く、求人の選び方自体が定着に影響する。
監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)
障害者雇用の支援サービス比較メディア「障害者雇用ベンダー比較ナビ」運営責任者。本記事の数値は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が公表する一次資料(調査研究報告書No.137)に基づいて作成しています。
「せっかく採用できたのに、数ヶ月で辞めてしまった」――障害者雇用の担当者なら、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。実はこれは特定の会社だけの問題ではありません。公的データでは、精神障害者の約2人に1人が就職1年以内に離職しています。しかも、この数字は打ち手次第で大きく変わることもわかっています。この記事では、JEEDが公表する一次データをもとに、定着率の実態と、早期離職を防ぐために何ができるかを整理します。
📑 この記事でわかること
1年後の定着率はどれくらい?公的データを見る
障害者雇用の定着率を国が継続的に公表している統計は多くありませんが、JEED(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)が2015年度に実施し、2017年4月に公表した調査研究報告書No.137「障害者の就業状況等に関する調査研究」に、障害種類別の定着率データがまとめられています。
公共職業安定所の紹介で一般企業に就職した人のうち、就職後1年時点の職場定着率は次のとおりでした。
| 障害種類 | 就職後1年時点の定着率 |
|---|---|
| 身体障害 | 60.8% |
| 知的障害 | 68.0% |
| 精神障害 | 49.3% |
| 発達障害 | 71.5% |
JEED調査研究報告書No.137(2017年)より
精神障害者の職場定着率
49.3%
就職後1年時点。つまり約2人に1人が、1年以内に離職していることになります。
精神障害は他の障害種類と比べて定着率が低い傾向にあり、これは職場での配慮の仕方や、体調・特性の波への対応が、より丁寧な設計を必要とすることを示唆しています。
支援制度の利用で定着率はどう変わる?
同じ調査には、もう一つ注目すべきデータがあります。一般求人により就職した人を対象に、就労移行支援やジョブコーチ支援などの「支援制度の利用」があった場合となかった場合を比較したところ、次のような差が出ました。
支援制度を利用した場合の定着率は65.6%。利用しなかった場合は約37.7%にとどまり、その差は27.9ポイントにのぼります。これは「採用してからどう関わるか」だけでなく、「採用の前後にどんな支援・仕組みを組み込むか」が、定着を大きく左右することを示す数字です。
求人の選び方は定着率に影響する?
同調査では、求人の種類別に見た1年後の定着率も報告されています。
| 求人の種類 | 1年後の定着率 |
|---|---|
| 障害者専用求人(障害者雇用枠) | 70.4% |
| 一般求人・障害を開示 | 49.9% |
| 一般求人・障害を非開示 | 30.8% |
障害者専用求人と一般求人・障害開示の差は約20.5ポイント。同じ一般求人でも、障害を開示した場合と非開示のまま就職した場合とでは19.1ポイントもの差が出ています。障害者専用求人はもともと配慮を前提とした採用フローになっていることが多く、この差につながっていると考えられます。
早期離職につながりやすい「4つの落とし穴」
ここまでのデータを踏まえると、早期離職の背景には、本人の「頑張りが足りない」といった個人の問題ではなく、採用前後の配慮の設計・支援の有無という構造的な要因が大きく関わっていることが見えてきます。具体的には次のようなケースが典型です。
- 配慮事項や相談窓口を決めないまま採用し、入社後に現場が対応しきれなくなる
- 任せる業務があいまいなまま採用し、本人のモチベーションが続かなくなる
- 支援機関との連携がなく、体調や特性の変化に会社だけで対応しようとしてしまう
- 障害者専用求人ではなく一般求人での採用にこだわり、配慮の前提が共有されないまま進む
早期離職を防ぐには何をすればいい?
公的データが示す傾向を踏まえると、早期離職を防ぐための打ち手は次の3つに整理できます。
1. 採用前に支援制度・支援機関を組み込む
就労移行支援事業所やジョブコーチ支援など、外部の支援制度をあらかじめ採用プロセスに組み込むことで、定着率が上がる傾向がデータに表れています。自社だけで抱え込まないことが出発点です。
2. 障害者専用求人での採用を基本にする
一般求人での採用にこだわらず、障害者専用求人(障害者雇用枠)を軸にすることで、配慮を前提とした採用フローに乗りやすくなります。
3. 入社後のフォロー体制を事前に決めておく
相談窓口・業務指示の出し方・体調変化への対応方針を、採用前に決めておくことで、入社後に現場が手探りになる状態を避けられます。
自社だけで難しいときはどうする?
支援制度の活用や業務の切り出し、入社後のフォロー体制づくりを自社だけで進めるのが難しい場合は、外部の支援サービスを活用する選択肢があります。定着支援を専門とするサービスや、採用から定着までを一貫してサポートする人材紹介型のサービスなど進め方はいくつかあり、それぞれ得意・不得意があります。複数社を比較したうえで、自社の状況に合う形を選ぶことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 障害者雇用の定着率49.3%とは、どんな数字ですか?
A. 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が2017年に公表した調査研究報告書No.137によると、公共職業安定所の紹介で一般企業に就職した精神障害者の、就職後1年時点の職場定着率は49.3%でした。同じ調査で身体障害者は60.8%、知的障害者は68.0%、発達障害者は71.5%となっています。
Q. 支援制度を使うと定着率は本当に上がるのですか?
A. 同調査によると、一般求人により就職した人のうち、就労移行支援やジョブコーチ支援などの支援制度を利用した場合の1年後定着率は65.6%で、利用しなかった場合より27.9ポイント高い結果でした。個社の状況により差はありますが、公的統計として支援制度の利用と定着率向上には関連が見られます。
Q. このデータは今の状況にも当てはまりますか?
A. この調査は2015年度に実施され2017年に公表されたもので、障害者雇用の定着率を障害種類別に公的機関が調査した数少ないデータです。調査時点から年数が経過している点には留意が必要ですが、他に同規模の公的統計が乏しいため、現在も職場定着を考えるうえでの参考値として広く引用されています。
Q. 早期離職を防ぐために、何から着手すればよいですか?
A. 公的データが示す傾向を踏まえると、優先すべきは「採用前に支援制度・支援機関を組み込む」「障害者専用求人での採用を基本にする」「入社後のフォロー体制を事前に決めておく」の3点です。いずれも採用活動そのものより前段階の準備に関わるため、求人を工夫する前にまずこの3点を見直すことをおすすめします。
参考・出典
※本記事のデータは2015年度に実施された調査に基づくものであり、現在の状況を完全に反映しているとは限りません。個別企業における定着率は、業種・職種・支援体制等により異なります。最新の統計・制度については、厚生労働省・JEED等の公式情報をご確認ください。