精神・発達障害者の雇用と職場での配慮
―受け入れの不安を解消する基本
🤖 3行でわかる精神・発達障害者の雇用配慮
- 近年新たに雇用される障害者の多くを精神障害・発達障害のある方が占めており、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている場合に法定雇用率の算定対象となる。
- 同じ診断名でも得意・不得意や必要な配慮は一人ひとり大きく異なるため、あいまいな指示を避けて手順を文章や図で示す、作業を小さく分けるなど、対話を通じて本人に合った配慮を確認することが基本になる。
- 社内に受け入れ経験がなくても、ジョブコーチや就労移行支援事業所などの公的な仕組みや、採用から定着支援まで伴走する民間の支援サービスを組み合わせることで安定した受け入れがしやすくなる。
監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)
障害者雇用の支援サービス比較メディア「障害者雇用ベンダー比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省・JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の公表資料をもとに作成し、内容を確認しています。
近年、企業に新たに採用される障害のある方の多くを、精神障害・発達障害のある方が占めるようになっています。一方で「どう受け入れればよいかわからない」「見た目でわかりにくく不安」という声も少なくありません。この記事では、特性の基礎知識から職場でできる配慮、定着のポイントまでを、中立的な立場で整理します。
📑 この記事でわかること
いま雇用の中心は精神・発達障害
かつて障害者雇用というと、身体障害のある方の採用が中心というイメージがありました。しかし現在は、精神障害・発達障害のある方の採用が大きく伸びており、新たに雇用される方の多くをこの層が占める状況になっています。2026年7月の法改正で新たに義務対象となる企業にとっても、精神・発達障害のある方の受け入れは避けて通れないテーマといえます。
外見からはわかりにくいことが多いため、「どこに配慮すればよいのか見えづらい」という戸惑いが生まれがちです。しかし、ポイントを押さえれば、特別なコストをかけずに受け入れられるケースも少なくありません。
精神障害・発達障害とは(基礎知識)
精神障害は、うつ病、統合失調症、双極性障害、不安障害など、こころの病気による生活・就労上の困りごとを指します。発達障害は、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如・多動症)、LD(学習障害)などが含まれ、生まれつきの特性として現れます。
いずれも重要なのは、同じ診断名でも、得意・不得意や必要な配慮は一人ひとり大きく異なるという点です。「ASDだからこうだ」といった一括りの理解ではなく、目の前の本人がどのような環境で力を発揮できるかを、対話を通じて把握する姿勢が基本になります。
手帳と法定雇用率の関係
精神障害のある方が法定雇用率の算定対象となるのは、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている場合です。発達障害のある方も、精神障害者保健福祉手帳を取得しているケースが多くあります。手帳を持つ方を雇用すると、自社の実雇用率に算入されます。
ただし、短時間労働者のカウント方法など、算定の細かなルールは制度改正で見直されることがあります。実際の算定にあたっては、厚生労働省・JEEDの最新の公表資料を確認することをおすすめします。自社の義務人数の数え方は、別記事の計算ツールでも確認できます。
職場でできる配慮の具体例
精神・発達障害のある方への配慮は、大がかりな設備投資よりも、コミュニケーションや働き方の工夫が中心になることが多いのが特徴です。代表的な例を整理しました。
| 困りごとの例 | 職場でできる配慮の例 |
|---|---|
| あいまいな指示が苦手 | 口頭だけでなく、手順を文章や図で示す。ゴールと優先順位を明確に伝える |
| 一度に多くの情報を処理しにくい | 作業を小さく分け、一つずつ依頼する。同時進行のタスクを減らす |
| 疲れやすさ・体調の波がある | 短時間勤務から始める。休憩を取りやすくする。通院への配慮 |
| 音や光などの刺激に敏感 | 席の位置を調整する。イヤーマフの使用を認める。静かな作業スペースを用意 |
| 相談や報告が苦手 | 定期的な面談の場を設ける。相談窓口となる担当者を決めておく |
これらは一例です。実際にどの配慮が必要かは本人によって異なるため、採用前後の対話で「何があれば働きやすいか」を具体的に確認することが大切です。配慮の法的な位置づけについては、合理的配慮の解説記事もあわせてご覧ください。
受け入れ前に整えておきたいこと
- 担当者・相談窓口を決めておく――困ったときに誰に相談すればよいかが明確だと、本人も現場も安心できます。
- 任せる業務を切り出しておく――手順が明確な業務を用意しておくと、立ち上がりがスムーズです。
- 現場の理解を得ておく――一緒に働くメンバーに、必要な範囲で受け入れの目的や配慮の方針を共有しておきます。
- 体調の波を前提にした計画にする――最初から100%を求めず、段階的に業務を広げる前提で設計します。
定着のための伴走支援
精神・発達障害のある方の雇用では、採用そのものよりも「その後どう定着してもらうか」が課題になりやすい傾向があります。社内に受け入れの経験がない場合は、外部の支援を借りるのが現実的です。
たとえば、職場に出向いて本人・企業の双方を支援するジョブコーチや、就職前後を支える就労移行支援事業所などの公的な仕組みがあります。また、採用から定着支援までを一貫して伴走してくれる民間の支援サービスもあります。社内にノウハウがなくても、こうした支援を組み合わせることで、安定した受け入れがしやすくなります。
よくある質問(FAQ)
Q. 精神障害者保健福祉手帳を持つ人は、法定雇用率にカウントされますか?
A. 精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている方は、法定雇用率の算定対象になります。ただし、短時間労働者のカウント方法など算定の細かいルールは制度改正で見直されることがあるため、正確な算定方法は厚生労働省・JEEDの最新の公表資料でご確認ください。
Q. 精神・発達障害の特性は本人ごとに違いますか?
A. はい。同じ診断名でも、得意なこと・苦手なこと・必要な配慮は一人ひとり大きく異なります。診断名で判断するのではなく、採用前後に本人と対話し、どのような環境や進め方であれば力を発揮できるかを確認することが重要です。
Q. 受け入れの経験がなくても雇用できますか?
A. 経験がない企業でも、外部の支援機関やジョブコーチ、就労移行支援事業所などのサポートを受けながら受け入れを進めることができます。定着支援まで伴走してくれる支援サービスを活用することで、社内にノウハウがなくても安定した受け入れがしやすくなります。
参考・出典
- 厚生労働省「障害者雇用の状況」および精神障害者・発達障害者の雇用支援関連資料
- 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「精神障害者・発達障害者の雇用マニュアル」
※本記事は受け入れの一般的な考え方を分かりやすく解説するものです。必要な配慮は本人ごとに異なります。制度・算定に関する事項は、厚生労働省・JEEDの最新の公式情報をご確認ください。