就労継続支援A型・B型と「雇用」の違い
―自社の法定雇用率にカウントされるかを正しく理解する
監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)
障害者雇用の支援サービス比較メディア「障害者雇用ベンダー比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省・JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)の公表資料をもとに作成し、内容を確認しています。
「就労継続支援事業所に仕事を発注していれば、障害者雇用の義務を果たしたことになる」――これは、企業の人事担当者からよく聞く誤解のひとつです。就労継続支援は障害者総合支援法にもとづく福祉サービスであり、企業が果たすべき障害者雇用(法定雇用率の充足)とは、制度上まったく別の枠組みです。この記事では、A型・B型それぞれの仕組みと、自社の法定雇用率にどう関わる(関わらない)のかを整理します。
📑 この記事でわかること
就労継続支援とは|福祉サービスとしての位置づけ
就労継続支援は、障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスのひとつで、一般企業での就労が難しい障害者に対して、働く場と訓練の機会を提供する制度です。運営するのは社会福祉法人やNPO法人、株式会社など多岐にわたり、利用者は「従業員」ではなく「利用者(サービス利用者)」として事業所に通います。
この仕組みは、あくまで福祉サービスの利用であり、一般企業に雇われて働く「障害者雇用」とは制度の根拠となる法律も、目的も異なります。まずこの前提を押さえることが、A型・B型を正しく理解する出発点になります。
A型とB型の違い
| 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | |
|---|---|---|
| 雇用契約 | 事業所と雇用契約を結ぶ | 雇用契約は結ばない |
| 賃金・工賃 | 最低賃金が保障される | 生産活動に応じた工賃(最低賃金の対象外) |
| 対象 | 一定の就労能力があり、雇用契約に基づく就労が可能な方 | 雇用契約での就労が難しい方、体調に波がある方など |
| 働き方の自由度 | 比較的、勤務日数・時間の定めがある | 体調に合わせて柔軟に調整しやすい |
A型は雇用契約を伴うため、最低賃金法が適用されます。一方でB型は「訓練」の側面が強く、体調やペースに合わせて無理なく働ける点が特徴です。どちらも運営するのは事業所であり、そこで働く(利用する)障害者と直接の雇用関係を結ぶのは、発注元の企業ではなく事業所である点は共通しています。
最重要:自社の法定雇用率にカウントされるか
ここが最も誤解されやすいポイントです。結論として、就労継続支援A型・B型を利用する障害者は、発注元企業の法定雇用率にはカウントされません。
法定雇用率の算定対象は、自社(または特例子会社・企業グループ適用の対象法人)と直接の雇用契約を結んだ障害者に限られます。就労継続支援事業所へ業務を発注・委託する行為は、あくまで事業者間の取引であり、そこで働く障害者との間に雇用関係は生じません。したがって、「発注しているから雇用率は大丈夫」という判断は、法律上は成り立ちません。
自社の法定雇用率を満たすには、原則として自社(またはグループ適用の対象法人)が障害者を直接雇用する必要があります。障害者雇用を進める際に検討される「農園型」「テレワーク型」「特例子会社型」といった支援モデルも、最終的には利用者と発注元(または関連会社)との間に雇用契約を結ぶ形をとっている点が、就労継続支援との決定的な違いです。
企業が就労継続支援と関わる主な場面
法定雇用率には直接算入されないとはいえ、企業が就労継続支援事業所と関わる場面は少なくありません。
- 業務委託・発注:データ入力、軽作業、清掃、印刷物の製作などを事業所に委託する
- 施設外就労:事業所のスタッフと利用者が、企業の敷地内で作業を行う契約形態
- 雇用への橋渡し:A型事業所での就労経験を経て、一般企業への就職(一般就労)を目指すケース
これらはCSRや地域貢献、あるいは将来的な直接雇用に向けた関係構築として意味を持ちますが、あくまで法定雇用率の充足とは別軸の取り組みとして位置づける必要があります。
「雇用」と「福祉的就労」の比較表
| 企業による直接雇用 | 就労継続支援(A型・B型) | |
|---|---|---|
| 根拠法 | 障害者雇用促進法 | 障害者総合支援法 |
| 雇用契約の相手 | 雇用する企業 | 就労継続支援事業所 |
| 法定雇用率への算入 | 算入される | 算入されない |
| 目的 | 企業における戦力としての就労 | 働く力を育む福祉的支援 |
自社はどちらを検討すべきか
法定雇用率を満たす必要がある企業(2026年7月以降は常用労働者37.5人以上が対象)は、自社での直接雇用を軸に検討する必要があります。その進め方には、自社採用のほか、農園型・テレワーク型・人材紹介型・業務切り出し型など複数の支援モデルがあり、業種や拠点、予算によって向き不向きが分かれます。
一方、まずは障害者雇用への理解を深めたい、地域の福祉事業所と関係を築きたいという場合は、業務委託から始めるという選択肢もあります。ただし前述のとおり、それだけでは法定雇用率は満たせないため、義務の期日から逆算して、直接雇用の準備も並行して進めることが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 就労継続支援事業所に仕事を発注すれば、自社の法定雇用率にカウントされますか?
A. カウントされません。発注は事業者間の取引であり、事業所を利用する障害者と発注元企業の間に雇用契約は生じないためです。
Q. A型とB型の一番の違いは何ですか?
A. A型は事業所と雇用契約を結び最低賃金が保障されます。B型は雇用契約を結ばず、生産活動に応じた工賃が支払われる点が異なります。
Q. 自社で直接雇用する以外に、就労継続支援を活用する意味はありますか?
A. あります。業務委託を通じて障害者雇用への理解を深めたり、将来の直接雇用や施設外就労の足がかりにしたりする企業もあります。ただし法定雇用率の充足には直接つながらない点に注意してください。
参考・出典
- 厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」「障害者雇用率制度」
- 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)公表資料
※本記事は制度の概要を分かりやすく解説するものです。個別の契約形態や算定の可否については、必ず厚生労働省・管轄の自治体・ハローワーク等の最新の公式情報をご確認ください。