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障害者雇用ビジネス(雇用代行)とは? 厚労省実態把握のデータと国の議論を整理(2026年)

公開日:2026年8月21日 / 最終更新:2026年8月21日

🤖 3行でわかる障害者雇用ビジネスの現在地

  • 厚生労働省は、いわゆる「障害者雇用ビジネス」(農園・サテライトオフィス等の施設と業務をセットで提供する事業)について、2025年11月末時点で46事業者・就業場所223カ所・就業障害者11,241人以上を把握したと労働政策審議会に報告している。
  • 利用そのものを禁止する法令の規定はないが、障害者雇用促進法第5条が定める「事業主の責務」(能力の正当な評価・適正な雇用管理・職業能力の開発及び向上など)を負うのは、代行サービスを利用する場合でも雇用主である利用企業自身である。
  • 2026年2月の研究会報告書と同年7月24日の労働政策審議会では、障害者雇用の「質」のガイドラインを法令に根拠を持つ形で整備し、障害者雇用ビジネスへのガイドラインと一体的・整合的に検討するという論点が示されており、制度の方向性が議論されている段階にある。
監修

監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)

障害者雇用の支援サービス比較メディア「障害者雇用ベンダー比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省・労働政策審議会障害者雇用分科会の公表資料およびe-Gov法令検索の条文をもとに作成し、内容を確認しています。

「貸し農園やサテライトオフィスを使った障害者雇用の代行サービスは、使っても大丈夫なのか」。法定雇用率の引き上げが続く中で、こうした相談は増えています。この記事では、感情論や噂ではなく、厚生労働省が労働政策審議会に報告した実態把握データ国の議論の現在地を一次資料で確認し、利用を検討する企業が「失敗しないために」何をチェックすべきかを整理します。

「障害者雇用ビジネス」とはどんなサービス?

厚生労働省の資料では、いわゆる「障害者雇用ビジネス」を「障害者の就業場所となる施設・設備(農園、サテライトオフィス等)及び障害者の業務の提供等を行う事業」と説明しています(労働政策審議会障害者雇用分科会・第136回参考資料3の注記)。企業は事業者と契約して農園の区画やオフィス席を利用し、障害のある方を自社の従業員として雇用したうえで、その就業場所と業務(農作業など)の提供を受ける、という構造が典型です。

重要なのは、この事業が事前の届出等の仕組みが設けられていない点です。厚生労働省自身が「厚生労働省として把握している情報は、都道府県労働局等が実施する事業所訪問等による事業主の任意の協力等により把握できた限りの情報」と明記しています。つまり、後述する数字は「国が把握できた範囲」であり、市場全体はこれより大きい可能性があります。

なお、このうち「農園型」の仕組み・費用・メリットとデメリットの詳細は、姉妹記事「農園型障害者雇用とは?メリット・デメリットと選ぶ前に知るべき注意点」で解説しています。本記事は、農園型を含む「雇用ビジネス」全体のデータと国の議論に焦点を当てます。

厚労省の実態把握で何がわかっている?

厚生労働省は2022年(令和4年)1月、都道府県労働局に対して、障害者雇用ビジネス実施事業者とその利用企業の実態把握を行うよう指示しました。以降、業務内容・業務量、雇用期間・労働時間等の労働条件、雇用管理の状況(勤怠管理・業務指示の流れ等)を継続的に把握し、必要に応じて事業主への支援や、法の基本理念・事業主の責務についての理解促進を行っています。

本記事公開時点で最新の報告(第136回労働政策審議会障害者雇用分科会・2025年12月22日)によれば、2025年(令和7年)11月末時点の把握状況は次のとおりです。

項目把握された数補足
ビジネス事業者数46法人把握する限り、就業場所が最も多い事業者は58カ所を運営。利用企業が最も多い事業者では700社以上が利用
就業場所数223カ所うち農園153カ所、サテライトオフィス58カ所。労働局等が訪問して実態把握したのは88カ所
利用企業数延べ1,803社以上社名を把握できた企業は364社(複数事業者の利用による重複計上あり)。うち82社に事業所訪問等を実施
就業障害者数11,241人以上労働局の聴取または事業者HP等による把握。把握できないものもあるため「以上」と表記

参考までに、日本成長戦略会議・労働市場改革分科会のとりまとめ(2026年6月2日、第140回分科会資料1に抜粋掲載)によれば、障害者の雇用者数は2025年6月時点で約70.5万人と過去最高を更新しています。雇用者数の拡大が続く一方で、同とりまとめは「能力発揮の促進といった雇用の『質』の向上の必要性」が課題として指摘されていることにも言及しています。

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何が論点になっている?国の議論の現在地

前提:雇用主の責務は「利用企業自身」にある

障害者雇用ビジネスの利用そのものを禁止する法令の規定はありません。一方で、障害者雇用促進法第5条(事業主の責務)は次のように定めています(e-Gov法令検索で条文を確認)。

  • 障害者である労働者の有する能力を正当に評価し、適当な雇用の場を与えること
  • 適正な雇用管理並びに職業能力の開発及び向上に関する措置を行うことにより、雇用の安定を図るように努めること

代行サービスを利用する場合でも、障害のある方の雇用主は利用企業自身です。したがって、雇用する障害者との関係でこの努力義務を負うのは、ビジネス事業者ではなく雇用主である利用企業です。厚生労働省が労働局を通じて行っているのも、この「基本理念や事業主の責務についての理解促進」と、障害者の能力に応じた業務の選定等についての事業主支援です。

2026年の動き:「質」のガイドラインと一体で検討へ

2026年(令和8年)2月6日に公表された「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」報告書は、障害者雇用の「質」として特に重視されるべき中心的な要素として、①能力発揮の十分な促進、②能力発揮の成果の事業活動への十分な活用、③適正な雇用管理、④発揮した能力に対する正当な評価とその反映、⑤雇用の安定、の5点を挙げ、これらを法令において明示する方向を示しました。

これを受けた第140回労働政策審議会障害者雇用分科会(2026年7月24日)の資料では、同資料では、障害者雇用ビジネスに関わるものを含め、次の論点が提示されています。

  • 「障害者雇用ビジネス」の課題の是正に向けて示すべき事項は、障害者雇用全体の「質」として重視すべき要素(能力発揮の十分な促進、能力発揮の成果の事業活動への十分な活用等)と密接に関わるため、両者のガイドラインは一体的、あるいは内容において十分に整合性が図られるよう検討する必要があるのではないか
  • 「質」のガイドラインは、法律上の努力義務規定+告示という形で根拠を設け、施行に際し必要があると認める場合の報告徴収・指導・助言・勧告の規定の対象とすることとしてはどうか
  • もにす認定制度を含む認定制度の見直しでは、「能力発揮の成果の事業活動への十分な活用」について、障害者雇用ビジネスに係るガイドラインにおいて「有為に活用されていないと判断されるような状態ではないこと」を要件とする例が示された

注意したいのは、これらはいずれも審議会に「論点」として提示された段階であり、確定した制度ではないという点です。障害者雇用ビジネスに係るガイドラインの具体的な内容は、同資料で「次回議論」とされています。ただし、「雇用率を満たしているか」だけでなく「雇用した障害者の能力が事業活動に活かされているか」を国が見る方向で議論が進んでいることは、利用企業・検討企業にとって押さえておくべき変化です。

利用を検討するとき、何をチェックすべき?

「失敗しない」ための最大のポイントは、労働局が実態把握で見ている項目を、自社が自分の言葉で説明できるかという視点で契約前に確認しておくことです。厚労省資料に挙げられた把握項目をチェックリストに置き換えると、次のようになります。

  • 業務内容・業務量:雇用する方が担う業務は具体的に何か。業務量は労働時間に見合っているか。その業務は自社の事業活動とどうつながるか
  • 労働条件:雇用期間・労働時間・賃金は自社の他の従業員と整合的に説明できるか
  • 雇用管理の主体:勤怠管理・業務指示は誰が行うのか。雇用主である自社が雇用管理に実質的に関与できる体制か
  • 能力開発とキャリア:促進法第5条が挙げる「職業能力の開発及び向上に関する措置」に相当する取り組み(スキル習得、業務の広がり、評価と処遇への反映)があるか
  • 制度動向への対応:「質」のガイドラインや認定制度見直しなど今後の制度変更が固まったとき、契約内容や運用を見直せる余地があるか

これらに明確に答えられる形で運用できるなら、就業場所が農園やサテライトオフィスであること自体が直ちに問題になるわけではありません。逆に、「雇用率のためにお任せしたい。業務内容や雇用管理はよく分からない」という状態で契約すると、雇用主としての責務を果たしているか説明できず、将来の制度変更時に対応を迫られるリスクが残ります。

雇用代行型に限らず、人材紹介型・定着支援型など複数の支援モデルを比較して自社の課題に合う方法を選びたい場合は、「障害者雇用支援ベンダーの選び方|失敗しない7つのチェックポイント」もあわせてご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 障害者雇用ビジネス(雇用代行サービス)の利用は違法ですか?

A. 障害者雇用ビジネスの利用そのものを禁止する法令の規定はありません。ただし、障害者雇用促進法第5条は、障害者を雇用する事業主(=利用企業自身)に対して、能力の正当な評価、適当な雇用の場の提供、適正な雇用管理、職業能力の開発及び向上に関する措置を行うことにより、その雇用の安定を図るよう努める責務を定めています。厚生労働省は都道府県労働局を通じて実態把握を行い、事業主等に対して法の基本理念や事業主の責務についての理解促進を行っています。

Q. 国は障害者雇用ビジネスの規模をどの程度と把握していますか?

A. 厚生労働省が労働政策審議会障害者雇用分科会(第136回・2025年12月22日)に報告した資料によれば、2025年(令和7年)11月末時点で、ビジネス事業者46法人が運営する就業場所223カ所(うち農園153カ所、サテライトオフィス58カ所)を把握し、利用企業は延べ1,803社以上、就業障害者数は11,241人以上とされています。事前の届出制ではないため、これは労働局の事業所訪問等で把握できた範囲の数字です。

Q. 障害者雇用ビジネスへの規制は今後強化されますか?

A. 2026年8月時点で、利用を禁止する規制が決まった事実はありません。ただし、2026年(令和8年)2月6日の「今後の障害者雇用促進制度の在り方に関する研究会」報告書は、障害者雇用の「質」として重視すべき要素を法令に明示する方向を示し、同年7月24日の労働政策審議会障害者雇用分科会では、障害者雇用ビジネスに対するガイドラインを、雇用の「質」のガイドラインと一体的または整合的に検討するという論点が提示されました。制度の方向性は今後の審議会の議論で決まるため、利用中・検討中の企業は動向を注視する必要があります。

参考・出典

※本記事は、公表されている一次資料に基づいて障害者雇用ビジネスをめぐる実態把握データと制度議論の現在地を整理するものであり、特定の事業者・サービスの適法性や適否を評価するものではありません。審議会で示された論点は確定した制度ではなく、今後の議論により内容が変わる可能性があります。個別の契約・運用のご判断にあたっては、最新の公表資料や都道府県労働局・社会保険労務士等の専門家にご確認ください。

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