もにす認定制度とは
―中小企業向け障害者雇用の認定基準と4つのメリット
🤖 3行でわかるもにす認定制度
- もにす認定は、障害者雇用の取り組みが優良な常時雇用労働者300人以下の事業主を厚生労働大臣が認定する制度(障害者雇用促進法第77条第1項、令和元年改正で創設)。
- 認定基準は50点満点で20点以上(特例子会社は35点以上)。加えて取組5点以上・成果6点以上・情報開示2点以上という項目ごとの最低点と、法定雇用率の達成などの条件を満たす必要がある。
- メリットは、認定マークの使用・国と労働局による周知広報・日本政策金融公庫の低利融資・公共調達の加点評価(地方公共団体の調達等が対象で、受けられる場合がある)の4つ。認定事業主は令和8年3月31日時点で611事業主。
監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)
障害者雇用の支援サービス比較メディア「障害者雇用ベンダー比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省の業務取扱要領・リーフレット等の公表資料をもとに作成し、内容を確認しています。
障害者雇用に前向きに取り組んでいても、その努力は社外からは見えにくいものです。「もにす認定制度」は、その取り組みを国が認定し、対外的に示せるようにする仕組みで、対象は中小企業に絞られています。この記事では、どんな企業が申請できるのか、何点取れば認定されるのか、認定を受けると何が変わるのかを、厚生労働省の公表資料に基づいて整理します。
📑 この記事でわかること
もにす認定制度とは
もにす認定制度は、正式名称を「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度」といい、障害者の雇用の促進および雇用の安定に関する取り組みの実施状況などが優良な中小事業主を、厚生労働大臣が認定する制度です。障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「障害者雇用促進法」)の令和元年改正によって創設され、根拠となる規定は同法第77条から第77条の3までに置かれています。
愛称の「もにす」は、企業と障害者が明るい未来や社会の実現に向けて「ともにすすむ」という思いを込めて名付けられたものです。厚生労働省が制度創設の背景として挙げているのは、中小事業主は大企業に比べて障害者の実雇用率が低く、雇用義務があるのに障害者を全く雇用していない企業(いわゆる「障害者雇用ゼロ企業」)が多い、という状況です。罰則で押し出すのではなく、前向きに取り組んでいる中小企業を可視化し、地域の身近なロールモデルとして広げていく——それがこの制度のねらいだといえます。
認定を受けた事業主は、令和8年3月31日時点で611事業主にのぼります(厚生労働省「認定事業主一覧」)。制度が始まったのは令和2年(2020年)4月で、最初の認定は同年10月21日に行われています。
申請できるのはどんな企業?
申請できるのは、常時雇用する労働者の数が300人以下の事業主です(障害者雇用促進法第77条第1項)。ここでいう労働者数の数え方には、実務上おさえておきたい細かいルールがあります。厚生労働省の業務取扱要領では、次のように整理されています。
| 論点 | 取り扱い |
|---|---|
| 短時間労働者の数え方 | 1人を0.5人として算定する |
| 除外率 | 考慮しない |
| グループ企業の合算 | 特例子会社制度・関係会社特例・関係子会社特例・事業協同組合特例による合算は行わない |
| 申請の単位 | 事業主単位で行う(事業所単位ではない) |
| 法人格 | 株式会社以外の法人(社会福祉法人・特殊法人・独立行政法人等)や個人事業主も対象 |
見落とされやすいのが、雇用義務のない小規模な会社でも申請できるという点です。業務取扱要領には、法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数が37.5人未満で、法定雇用障害者数が0人となる事業主であっても、本認定制度の対象として申請を行うことが可能である、と明記されています。「うちはまだ雇用義務の対象ではないから関係ない」と考えていた会社にも、扉は開かれています。
また、成長企業にとって安心できる取り扱いもあります。申請時点で300人以下であれば、その後に労働者数が300人を超えたというだけでは、認定基準に適合しなくなるわけではないとされています。認定を目指している途中で会社が伸びても、それだけで振り出しに戻るわけではないということです。
一方で、労働者数とは逆に、対象障害者の雇用は継続していることが必要です。業務取扱要領は、申請時点では対象障害者を雇用していたものの、その後の離職等により雇用する対象障害者が0人となった場合は、認定基準に該当しないとしています。認定を目指す過程では、採用そのものよりも、雇用を続けられる体制のほうが問われることになります。
自社の労働者数の数え方や、法定雇用率の達成状況が判断しづらい場合は、法定雇用率の計算方法(自動計算ツール付き)もあわせてご確認ください。
認定基準|50点満点で20点以上
認定の中心にあるのが、点数による評価です。評価は「取組(アウトプット)」「成果(アウトカム)」「情報開示(ディスクロージャー)」の3分野に分かれており、合計50点満点のうち20点以上(特例子会社は35点以上)を取ることが必要です。ただし合計点だけでは足りず、分野ごとの合格最低点も同時に満たす必要があります。
| 評価分野 | 主な評価項目 | 満点 | 合格最低点 |
|---|---|---|---|
| 取組(アウトプット) | 体制づくり(組織面・人材面)、仕事づくり(事業創出・職務選定・障害者就労施設等への発注)、環境づくり(職務環境・募集採用・働き方・キャリア形成・その他の雇用管理) | 20点 | 5点 |
| 成果(アウトカム) | 数的側面(雇用状況・定着状況)、質的側面(満足度、ワーク・エンゲージメント・キャリア形成) | 24点 | 6点 |
| 情報開示(ディスクロージャー) | 体制・仕事・環境づくりの開示、数的側面の開示、質的側面の開示 | 6点 | 2点 |
| 合計 | — | 50点 | 20点(特例子会社35点) |
配点を見ると、もっとも重いのは「成果」の24点です。取り組みの姿勢を示すだけでなく、実際に何人雇用し、どれだけ定着したかという結果が問われる設計になっています。
点数以外に満たすべき条件
点数に加えて、厚生労働省のリーフレットでは次の条件が示されています。
- 法定雇用率を達成していること。雇用義務がない場合でも、雇用率制度の対象となる障害者を1名以上雇用していること(就労継続支援A型事業所の利用者は除く)
- 過去に認定を取り消された場合、取り消しの日から起算して3年以上経過していること(障害者雇用促進法第77条の3による取消し)
- 障害者雇用促進法と同法に基づく命令その他の関係法令に違反する重大な事実がないこと
- このほか業務取扱要領では、暴力団員等に該当しないこと、風俗営業・性風俗関連特殊営業に該当する事業を行っていないこと、不正行為により雇用関係助成金等の不支給措置を受けていないことなども欠格事由として定められています
「対象障害者を1名以上」の要件について、業務取扱要領は実人員において1以上を雇用していることを意味すると注意を促しています。短時間労働者を0.5人として数えた合計ではなく、実際の人数で1人以上必要だという意味です。
情報開示の点数には「毎年の報告」の誓約が伴う
情報開示の分野は満点6点と小さく見えますが、合格最低点2点が設定されているため避けて通れません。この分野で満点(各項目2点)の評価を受けるには、認定申請の内容を厚生労働省・労働局のホームページに掲載することを許可したうえで、毎年その更新情報を都道府県労働局に報告することを誓約する必要があります。掲載の許可のみの場合は各項目1点です。認定は取って終わりではなく、開示を続ける前提の制度である点は、申請前に社内で共有しておきたいところです。
なお、業務取扱要領によれば認定に有効期限はなく、更新申請も必要ありません。取り消され、または辞退しない限り有効です。ただし認定後もフォローアップがあり、情報開示で毎年の報告を誓約した場合は、毎年6月1日時点の状況をその年の7月15日までに管轄の労働局へ報告することとされています。基準に適合しなくなれば改善指導の対象となり、さらに認定の取消し(障害者雇用促進法第77条の3)に至ることもあります。
認定の前に、まず雇用と定着の実績づくりから
もにす認定は「成果(雇用状況・定着状況)」の配点が最も大きい制度です。30秒の質問に答えるだけで、採用から定着支援まで対応できる会社の候補を絞り込み、選んだ会社へ無料で一括資料請求できます。
無料で診断・比較する →認定を受ける4つのメリット
厚生労働省のリーフレットでは、認定事業主となるメリットとして次の4つが挙げられています。
1. 認定マーク「もにす」を使用できる
認定を受けた事業主は、障害者雇用優良中小事業主認定マークを自社の商品などに表示できます(障害者雇用促進法第77条の2第1項、同法施行規則第36条の18)。なお同条第2項は、認定を受けていない者が同じ表示やこれと紛らわしい表示を付すことを禁じています。表示できる範囲は幅広く、商品、役務の提供に用いる物、商品・役務・事業主の広告、取引に用いる書類や電磁的記録、営業所や事務所などの事業場、インターネットで公衆の閲覧に供する情報(自社サイトなど)、そして労働者の募集に用いる広告や文書が対象です。ハローワークの求人票に表示することもできます。人材採用の場面で使える点は、人手不足に悩む中小企業にとって実利のあるメリットといえます。なお、マークの使用にあたっては厚生労働省の「認定マークマニュアル」を遵守する必要があります。
2. 厚生労働省・労働局・ハローワークによる周知広報の対象になる
認定事業主の情報は厚生労働省と都道府県労働局のホームページに掲載され、社会的認知度を高めることができます。また、認定事業主に限定した合同説明会などが企画される場合があるとされています。
3. 日本政策金融公庫の低利融資の対象になる
認定事業主は、日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」における低利融資の対象となります。障害者雇用の取り組みに必要な設備資金や長期運転資金に使えるとされています。
ここは誤解されやすいところなので補足します。同公庫の公表資料では、障害者の雇用または合理的配慮の提供に取り組む事業者は特別利率①の対象とされ、そのうち障害者雇用促進法第77条に基づく認定を受けた方には特別利率②が適用されるとされています。つまり認定の効果は「融資を受けられるようになること」ではなく、適用される金利が一段有利になることだと理解するのが正確です。融資の可否・金額・条件は同公庫の審査によりますので、実際の利用にあたっては同公庫へ直接お問い合わせください。
4. 公共調達などで加点評価を受けられる場合がある
地方公共団体の公共調達、および国と地方公共団体の補助事業において、加点評価を受けることができる場合があります。ただしこれは実施主体である地方公共団体等の制度設計によるため、リーフレットでも「場合があります」という表現にとどめられています。自治体案件を狙う企業は、対象の自治体に個別に確認するのが確実です。
あわせて注意したいのは、加点評価の対象が「地方公共団体の公共調達」と「国および地方公共団体の補助事業」だという点です。業務取扱要領では、国の公共調達(調達そのもの)において加点することは認められていないと明記されています。国の入札での優遇を期待して申請すると、狙いが外れることになります。
申請の手順と審査期間
認定を受けようとする事業主は、申請書類一式を主たる事業所を管轄する都道府県労働局に持参または郵送で提出します。管轄のハローワークを経由して提出することもできます。
申請書類には、基準適合事業主認定申請書(告示様式第7号の8)、認定基準確認申立書、評価基準自己採点表などが含まれます。自己採点表は、前述の評価項目について申請する事業主自身が採点し、その結果を申告する様式です。つまり申請の実務は、まず自社で50点満点の採点を行い、20点に届くかを確かめるところから始まります。様式は厚生労働省のホームページからダウンロードできます。
審査の結果、認定基準をすべて満たしていることが確認された場合は、都道府県労働局から認定通知書が交付されます。厚生労働省のリーフレットには「認定審査には3か月ほどお時間をいただいています」と記載されています。ただし業務取扱要領を見ると、この標準審査期間は「認定の受理から認定又は不認定の通知までに要する」期間で、原則として3か月以内とされています。書類を提出した日から3か月ではありません。不備があれば受理の前に補正の指示が入り、そのぶん期間は延びますので、認定マークを採用広報に使いたい時期がある場合は、余裕をもって逆算することをおすすめします。
認定を目指す前に確認したいこと
もにす認定は、これから障害者雇用を始める会社が最初に目指すものというより、すでに雇用と定着の実績がある会社が、その実績を対外的に示すための制度です。配点が最も大きい「成果(アウトカム)」が24点を占め、雇用状況と定着状況が評価の柱になっているためです。
したがって、まだ採用に着手していない、あるいは採用したものの早期離職が続いている段階であれば、認定申請より先に定着支援の体制づくりに取り組むほうが結果的に近道になります。自社だけで進めるのが難しい場合は、採用から定着まで対応できる支援サービスを比較検討し、外部の力を借りながら実績を積み上げる方法もあります。
なお、認定の可否や具体的な採点の判断は都道府県労働局が行います。自社が基準を満たしそうかどうかの見立てを含め、申請を検討する段階で管轄の都道府県労働局またはハローワークに相談することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. もにす認定を申請できるのはどんな企業ですか?
A. 常時雇用する労働者の数が300人以下の事業主です(障害者雇用促進法第77条第1項)。株式会社以外の法人(社会福祉法人・特殊法人・独立行政法人等)や個人事業主も対象で、申請は事業主単位で行います。厚生労働省の業務取扱要領では、労働者数が37.5人未満で法定雇用障害者数が0人となる事業主であっても申請できるとされています。
Q. もにす認定の認定基準は何点取れば合格ですか?
A. 評価は50点満点で、合計20点以上(特例子会社は35点以上)が合格最低点です。あわせて、取組(アウトプット、満点20点)で5点以上、成果(アウトカム、満点24点)で6点以上、情報開示(ディスクロージャー、満点6点)で2点以上という項目ごとの最低点も満たす必要があります。このほか、法定雇用率を達成していることなどの条件もあります。
Q. もにす認定を受けるとどんなメリットがありますか?
A. 厚生労働省のリーフレットでは4つが挙げられています。(1)認定マーク「もにす」を自社の商品・広告・求人票などに表示できる、(2)厚生労働省・都道府県労働局・ハローワークによる周知広報の対象になる、(3)日本政策金融公庫の「働き方改革推進支援資金」の低利融資の対象になる、(4)地方公共団体の公共調達や、国と地方公共団体の補助事業で加点評価を受けられる場合がある、の4つです。
Q. 申請してから認定までどのくらいかかりますか?
A. 厚生労働省のリーフレットには「認定審査には3か月ほどお時間をいただいています」と記載されています。申請書類一式は、主たる事業所を管轄する都道府県労働局に持参または郵送で提出します(管轄のハローワークを経由して提出することもできます)。
参考・出典
- 厚生労働省「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度(もにす認定制度)」
- 厚生労働省「障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度 業務取扱要領」(PDF)
- 厚生労働省「障害者雇用に関する優良な取り組みを行う中小事業主への認定制度を始めました!」リーフレット(PDF)
- 厚生労働省「もにす認定制度 認定事業主一覧」(令和8年3月31日時点)
- 日本政策金融公庫「働き方改革推進支援資金」
※本記事はもにす認定制度の一般的な仕組みを分かりやすく解説するものです。評価基準の細目・様式・融資条件などは制度改定により変わる場合がありますので、実際に申請をご検討の際は、厚生労働省の最新の公表資料をご確認のうえ、主たる事業所を管轄する都道府県労働局またはハローワークにご相談ください。