特例子会社とは
―認定要件・メリット・設立のハードルを解説
🤖 3行でわかる特例子会社
- 特例子会社とは、障害者雇用に特別の配慮をした子会社を厚生労働省の認定を受けて設立し、その雇用者を親会社に雇用されているものとみなして実雇用率を算定できる制度である。
- 子会社の認定要件は、雇用される障害者が5人以上かつ全従業員の20%以上、そのうち重度身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合が30%以上であることなどで、単独で満たすには一定の従業員規模が必要になる。
- 令和6年6月1日現在、全国の特例子会社は614社(前年より16社増)、雇用されている障害者は50,290.5人で、年々増加傾向にある(厚生労働省「令和6年障害者雇用状況の集計結果」)。
監修:山下 勝之(C&C株式会社 代表取締役)
障害者雇用の支援サービス比較メディア「障害者雇用ベンダー比較ナビ」運営責任者。本記事は厚生労働省の公表資料をもとに作成し、内容を確認しています。
障害者雇用について調べていると、「特例子会社」という言葉によく出会います。大手企業が障害者雇用の受け皿として設立しているイメージがある一方、「自社でも作れるのか」「作るとどんな得があるのか」は意外と知られていません。この記事では、特例子会社制度の仕組みと認定要件、実際に設立するときのハードルを、厚生労働省の公表資料に基づいて整理します。
📑 この記事でわかること
特例子会社とは何か
障害者雇用促進法に基づく法定雇用率の達成義務は、本来、個々の事業主(企業)ごとに課されています。しかし、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たして厚生労働省の認定を受けた場合、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できる仕組みがあります。これが「特例子会社」制度です(平成14年10月から企業グループでの適用も可能に拡大)。
障害の特性に配慮した専用の作業環境や指導体制を、既存の本体部署に無理に合わせるのではなく、一からその会社向けに設計できる点が、多くの企業がこの制度を選ぶ理由になっています。
特例子会社の認定要件は?
特例子会社の認定を受けるには、親会社側・子会社側それぞれに要件があります。
親会社の要件
- 親会社が、子会社の意思決定機関(株主総会等)を支配していること(具体的には、子会社の議決権の過半数を有すること等)
子会社の要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 親会社との人的関係 | 親会社との人的関係が緊密であること(親会社からの役員派遣等) |
| 雇用障害者数・比率 | 雇用される障害者が5人以上で、全従業員に占める割合が20%以上であること |
| 重度・知的・精神障害者の比率 | 雇用される障害者に占める重度身体障害者、知的障害者及び精神障害者の割合が30%以上であること |
| 雇用管理体制 | 障害者の雇用管理を適正に行うに足りる能力を有していること(施設の改善、専任の指導員の配置等) |
| その他 | 障害者の雇用の促進及び安定が確実に達成されると認められること |
「雇用される障害者が5人以上で全従業員の20%以上」という条件は、単に人数が少なければ満たせるものではありません。障害者を5人以上、しかもそのうち30%以上を重度身体障害者・知的障害者・精神障害者としたうえで、別法人としてその雇用を継続的に支える体制(専任の指導員配置など)を整える必要があります。業務の切り出しや専任スタッフの確保も含めると、中小企業が単独でこれらを満たすのは、現実的にはハードルが高いことが分かります。
特例子会社を作るメリットは?
- 実雇用率への算入:特例子会社の雇用者を親会社の実雇用率に算入できるため、法定雇用率の達成に直接つながる
- 専用の職場環境を作れる:障害の特性に応じた設備・業務・指導体制を、その会社専用に設計できる
- 専門人材の集約:障害者雇用の知見を持つ指導員・支援スタッフを一つの組織に集約でき、ノウハウが蓄積しやすい
グループ適用制度とは?
特例子会社を持つ親会社については、その特例子会社だけでなく、関係する子会社も含めた企業グループ全体で実雇用率を通算できる「グループ適用」制度があります。これにより、グループ内の複数の会社に分散していた障害者雇用の取り組みを、グループ全体の実雇用率としてまとめて評価できます。特例子会社制度とあわせて、グループ経営を行う企業にとっては選択肢の幅が広がる仕組みです。
設立のハードル・デメリットは?
特例子会社には明確なメリットがある一方、設立・運営には次のようなハードルもあります。
- 従業員規模の前提:前述のとおり、認定要件を満たすには一定の従業員規模(雇用障害者5人以上・全従業員の20%以上)が必要で、中小企業単独では実現が難しい
- 別法人としての運営コスト:法人を新設・維持するための事務コスト、専任の指導員配置などの人的コストが発生する
- 業務の切り出しが前提:特例子会社に任せる業務を、既存の事業から一定量切り出す必要があり、業務設計そのものの負荷は変わらない
- グループ内での位置づけの整理:特例子会社が孤立した存在にならないよう、グループ内での連携・キャリアパスの設計が必要になる
特例子会社を作らない選択肢もある
特例子会社は法定雇用率の達成に有効な制度ですが、認定要件のハードルから、実際に設立できる企業は限られます。多くの中小企業は、特例子会社という別法人を作らずに、次のような方法で障害者雇用に取り組んでいます。
- 既存の部署内で、任せられる業務を切り出して直接雇用する
- 業務の切り出しや採用選考のノウハウを、外部の支援ベンダーに相談する
- 農園型雇用や就労継続支援など、自社の業務量に左右されない外部の雇用モデルを活用する(それぞれメリット・デメリットがあるため、自社の状況に合うか個別に見極める)
いずれも特例子会社の設立を伴わないため、比較的小さい規模の企業でも取り組みやすい方法です。自社に合った進め方を見極めるには、複数の支援サービスを比較検討することをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 特例子会社を作ると、何がメリットになりますか?
A. 特例子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして実雇用率を算定できます。障害者の特性に配慮した専用の職場環境や指導体制を整えやすく、関係会社を含めたグループ適用制度も利用できます。
Q. 特例子会社の認定を受けるには、どのくらいの規模が必要ですか?
A. 雇用される障害者が5人以上、かつ全従業員に占める割合が20%以上、そのうち重度身体障害者・知的障害者・精神障害者の割合が30%以上であることが必要です。障害者5人以上・そのうち30%以上が重度等という要件を、別法人として継続的に支える体制とともに満たす必要があるため、中小企業が単独で満たすにはハードルが高い要件です。
Q. 特例子会社を作らずに法定雇用率を達成する方法はありますか?
A. 既存の部署内で業務を切り出して雇用する方法や、採用・定着支援を専門とする外部のベンダーに相談する方法があります。特例子会社のような別法人の設立を伴わずに、業務設計や採用選考のノウハウだけを借りることができます。
参考・出典
※本記事は特例子会社制度の一般的な仕組みを分かりやすく解説するものです。認定要件の該当性や設立手続きの詳細は、個別の事情により異なりますので、実際の設立をご検討の際は都道府県労働局・ハローワーク等の公式窓口にご確認ください。統計の「50,290.5人」など小数を含む人数は、重度身体障害者・重度知的障害者を2人分としてカウントする制度上の基準によるもので、実人数とは異なります。